箱とマーマレード

うたプリファンブログです。愛と感想と考察を書きます。

羅小黒戦記 感想 ネタバレあり

羅小黒戦記(ろしゃおへいせんき)を見てきた。

うたプリの二次創作者がツイッターでオススメしていたのが気になって観に行くことにした。

最後にすっと一筋涙が出るような結末で素敵だった。

 

ストーリー

開発によって森を追われた黒猫の妖精シャオヘイは、島に隠れて暮らす妖精フーシーたちと出会いやっと居場所を見つけたと思う。しかしそこに襲撃してきた人間のムゲンとの戦闘でフーシーたちと離れ離れになる。

ムゲンはシャオヘイを、妖精たちが暮らす館に連れて行くという。反発するシャオヘイだったが、ムゲンと共に島を脱出する船旅に出て、金属を操る術の使い方を教えてもらううちに、悪いやつではないのかもしれないと思い始める。

館は人間の街の中にある。シャオヘイは人間と妖精が共存する姿を見て驚く。そんな中、シャオヘイとムゲンは見知らぬ妖精に襲撃される。そしてこの妖精はフーシーたちの仲間だった。シャオヘイはフーシーたちに誘拐される。

フーシーの目的は、シャオヘイの隠れた才能である空間を操る術を利用し、人間のいない妖精だけの楽園をつくることだった。ムゲンと過ごして人間たちとも触れ合ってきたシャオヘイは、人間に復讐することに疑問を唱えた。フーシーは、シャオヘイの命が危うくなることを知りながら、シャオヘイの能力を吸い取り、空間を操る術を我が物にする。

フーシーが空間を操り、街を取り込んだ。空間の中では空間の主が全てを思いのままにできる。しかしムゲンはその空間の中に入り、フーシーと闘う。フーシーがムゲンに木の根を突き刺そうとしたその時、シャオヘイが目を覚まし、ムゲンを助ける。この空間の本当の主であるシャオヘイは、ムゲンと共にフーシーを倒す。

元々この地にはフーシーの故郷があった。緑豊かな故郷は開発によって失われ、フーシーはここを離れたのだった。敗北を悟ったフーシーは、この地からもう離れたくないと言い、自らを大きな樹に変えた。

シャオヘイは、たくさんの妖精が暮らす楽園のような館に着いたが、ムゲンとは暮らせないと知る。シャオヘイは、ムゲンを追いかけ、"師匠"のそばにいたいと言う。

妖精と人間の共存

妖精と人間の共存が大きなテーマ。作中には、人間との共存をのぞみ、人間社会と協力して暮らしていくために働いている妖精たちが出てくる。ただし彼らも全員が人間を気に入っているわけではなかった。人間に興味を持ってスマートフォンを使いこなすシュイ、人間は嫌いだったと語るキュウ爺、人間であるムゲンとは距離を置いて座るほかの執行役、人間に対する思いは様々だった。そして、妖精サイドにつく人間である館長は、フーシーの襲撃によって大きく破壊された街を見ながら、「これから忙しくなる。一度築いた信頼関係も、壊すのは簡単だ」ということを言っていたのが印象的だった。この世界の人間と妖精の共存には、一筋縄ではいかない苦労があったことが察せられる。

一方、フーシーのように人間を憎み、フーシーの計画に協力する妖精も出てくる。彼らはフーシー同様故郷を追われた描写があったりする。しかし、誘拐したシャオヘイから能力を吸い取るシーンは、フーシーを止めようとするロジュ、ロジュを止めるシューファイ、悲しそうな顔をするテンフー、厳しい顔のままの他の妖精、と、反応は様々だった。

この妖精たちの考え方の多様さが描写されていたのが非常に良かった。どのセリフ、どの妖精にも物語と葛藤を感じられて、キャラクターに生を与えていたように思う。特に、大樹になったフーシーを見た執行役が言ったセリフが印象的だった。あの諦念すら感じさせるセリフは、妖精内での葛藤が色濃く出ていて非常に切なかった。

 

ムゲンとシャオヘイの旅

そして、ずっとひとりぼっちで人間を憎み暮らしていたシャオヘイが、一方的に諭されるのではなく、様々な人間や妖精たちの考えに触れた上で自分の立場を決めていく過程が丁寧に描写されていた点が印象的だった。ムゲンは無口で、妖精にとって過ごしやすい地である館についてすら何も語らなかったが、そこが逆に嫌な教唆を感じず、シャオヘイの保護者として、師匠として、見ていて不安にならなかった。

ムゲンがシャオヘイに言った内容のある(?)ことといえば、「その力を悪いことに使うな」「善悪の判断はできるか」「信じよう」というあのホテルの一室の話くらいだったかなと思う。ムゲンはシャオヘイの人間を嫌う気持ちも否定しなかった。ムゲンは旅の中で人間とも妖精とも触れ合う機会をつくり、シャオヘイ自身に考えさせていた。だからこそ、最後にシャオヘイがフーシーを説得しようとしたり、ムゲンと共闘するシーンに説得力があった。

 

その他

・最強無口クール系宮野真守vs己の目的のために覚悟定まってるクール系櫻井孝宏ですよ!?!?!?!?!!めちゃかっこいい

・ムゲンの、シャオヘイへの愛情がセリフや行動の端々から感じられて良かった。ムゲンは逃げ出そうとするシャオヘイをよく捕まえていたが、怪我をさせることはなかった。やさしいやん…

 

とりあえず見て損は無い。反発から始まる師弟関係、イデオロギーの対立が好きな人は見てほしい。

劇団シャイニング BLOODY SHADOWS 感想

ブラシャ11/6 14時の公演を観てきました。

 

期待通り、いやそれ以上でした。本当に。

期待しすぎて100点満点中120点を求めてた節があるんだけど、結果としては五億点でしたマジで。

今日まで生きてきて本当によかった。

 

昨今の情勢により、舞台芸術は非常に厳しい状況に置かれています。そんな中で無事に上演までたどり着けた、そして私自身も無事に観劇することができたのがまずとても幸運でした。神社までお祈りに行った甲斐がありました…。

 

そして作品の出来は過去の劇団シャイニングシリーズ同様非常に高く、そしてレンと真斗とその関係を推す私がかける重い期待に十分に応えるものでした。本当に観に行けてよかった。

 

以下は感想です。ほぼ自分用の覚書です。

思い出す度に勝手に追記されていきます。

 

注意

・ネタバレがあります。

・BLを好む者の視点が入っています。

・初代と2代目を都合よく混同し、都合よく分けて考えます。

 

 

 

 

 

 

【ブラシャ感想】

・100点どころではない

・見たいものが全てあったし、期待を大幅に超えてきた

・マサフェリーとウォーレンの関係が最高だった。私が見たい感情だった

・冒頭マサフェリーを噛んだのがウォーレンだったのでもう……

・マサフェリーがはじめの生贄、弟くん、兄と3人殺し、ラスボスも殺したのがすごくすごくすごくよかった  殺しで重みが増していくマサフェリーが本当に最高だった

・そんなマサフェリーを最後まで信じマサフェリーの作る世界に協力するウォーレンが最高だった  ラスボス直前にふたり手を繋いで誓うシーンが本当に本当に本当に最高で仲のいいレンマサちゃんのせかいとして一番見たいものがそこにあった

・最後の殺陣でマサフェリーだけ剣がなかったけど(多分ここはミス?剣の音響は入ってたので)、最後ウォーレンがどこかでマサフェリーに剣を渡してラスボスに剣をむけるシーンにつなげたのが役者さんたちの絆を感じつつウォーレンとマサフェリーの絆を感じてとてもとても最高だった

・レンちゃんモテモテで嬉しかった。アイレスがウォーレンと片割れになって強い絆を感じていて、でもウォーレンは一人でなんでもやろうとするマサフェリーが放っておけなくて追いかけちゃうんだよなぁ

・マサフェリーが2発も右ストレート喰らっててすごくすごくよかった  アニメ1期の真斗がやった右ストレートからして真斗って結構力で訴えるところあると勝手に思ってるんだけど、真斗が力に訴えられた感じでよかった

・なんでもひとりでやろうとするマサフェリーをちゃんと追いかけて1発殴ったウォーレン、そしてそれを受け入れてウォーレンと握手したマサフェリーが、なんでも背負い込む真斗とさりげなく見てるレンちゃんに通じるものがあって最高だった

・最高  とにかく最高  本当にありがとう

・藍ちゃんの「うー赤き花ー」の高音がでる人がこの世にいると思わなかった  セリフも歌もすごく美風藍の声で全く違和感なかった

・アイレス役の秋葉さんは元々うたプリが好きだったらしく、ツイッターや、最後の挨拶でもそれに言及していた。こういった作り手側の愛を感じる話はやっぱり聞いていて嬉しい。また、秋葉さんは、役として話す時や歌声は藍ちゃんのようなきれいな高音が出ていたので地声も蒼井さんのように高めなのかと思っていたが、挨拶ではふつうの(特筆して高いわけではない)声だったので驚いた。うたプリ愛が果たした再現だったのかもしれない。

・マスミラの時もだけどラスボスに操られポジションの藍ちゃんイイ

・高本学さんめちゃ演技上手くなっててよかった。JTのときはレンちゃんの声意識してなのか語尾が出切ってない感じがあったけど今回は聞きづらいシーンが少なくて役として芯があって、ウォーレンとしても役者としてもかっこよかった。

・マサフェリー役の仲田さんは声が特別似ているわけじゃなかったけどすごく自然で物語に合っていた。あのブーツとかっこいいマントを着こなしていた…。うつくしかった。マサフェリーの誠実で優しいが苦悩の多い性格がよく出ていて美しかった

・ウォーレンがマサフェリーの首掴んで生贄の血を吸わせるところはマサフェリーの「ウォーレン…」ってかすれたちいさな声がめちゃくちゃめちゃくちゃめちゃくちゃよくてもうしんどかった  あのシーンのあの一瞬だけマサフェリーだけウォーレンに甘えたようなようすでそれでもウォーレンが自分を思ってくれているのをわかってるから抵抗もしきれずあの狭間で出たかすれた「ウォーレン」がすごくよかったーーーーーー

・とにかく美しかった。全て美しい。

・演出がとてもよかった。霧出たり、照明の反射で魔法を表現したり、時間経過を時計と謎の妖精さんで表現したり、新しい試みとやらがすごくファンタジー世界に合っていた。

・話は、人間とヴァンパイアの共存の道を探すマサフェリーが、ヴァンパイアにとっての真の救いは滅びだという結論に至る話で、これがまた都合が良くなくてよかった。人間もヴァンパイアも手にかけたマサフェリーが至る結論としてとても美しかった。

・原作の一番最後のセリフの「朝が来たらそこには誰も居ない」みたいなやつが、ヴァンパイアの滅びで自分たちもいつか死ぬことが重ねられててもう最高だった。泣いた。とにかく脚本が容赦なくて上手かった。ポラリスもめっちゃ人死ぬやん…って感じだったけどほさかさんのそういう容赦ないところがマサフェリーを美しく彩っててとにかく美しかった…。宗教画のような美しさ。死によって彩られる神聖な美しさ。

・ウォーレンとマサフェリーがすごくよかったな…

・マサフェリーが人間を手にかけるシーンがもう本当に最高でめちゃくちゃ見たかったやつだった。迷い、苦悩、己の信念、人間への愛情、そういったものの狭間で、自分にできること、自分がやったことの意味を考えるマサフェリーがとても悲劇的で美しかった。

マサフェリーが悲劇的につよくうつくしく確固たる信念を持つ過程が美しくてもう…

・ウォーレンとマサフェリーが最終決戦に向かっていくシーンで客席に背中を向けて2人並んだところ、オレンジと青の髪が並んで揺れて同じ目的に向かって共闘する姿、これが、これが本当に観たかった。これが私の観たいレンマサちゃんだった。あまりにもうつくしくて泣いた。そこに理想があった。

・最後挨拶マサフェリーがウォーレンの背?肩?に手を置いて「ちょっと触りたかった」

えっなにそれ……仲良しか?????高本学さんは自分は人見知りって言ってたけどすごく仲良くなってたみたいでよかった。

・ペンライト買ってよかった…このオレンジと青と薄紫の色が出るペンライト…ブラシャ仕様…

 

・他の方の感想で、真斗の上に立つ者としての素質がマサフェリーに投影されているという言及がいくつかありめちゃくちゃわかる〜〜〜〜と思った。作中でもマサフェリーは己のエゴで他人に理想の世界を押し付けるところを指摘されていたけど、今後もしブラシャの続編がまた出たら(?)、ラスボスはマサフェリーなのかもしれない。ヴァンパイアの救いは滅びだという結論に至った真斗はこれから沢山のヴァンパイアや、ヴァンパイアになって苦しむ人を屠っていくんだろう。ああ……

 

【11/19 19:00〜大阪公演】

・ウォーレンとマサフェリーが最後は己の身をも滅ぼすための死を敵に与えるために共闘を誓い握手をするシーンが本当に本当に崇高で、これが私の見たかったものだなぁと今日も思った。
あのシーンは共闘の誓いであり心中の誓いだ……。

・マサフェリーは今まで殺してきた命も、これから目的達成のために殺していく命も背負っていくし、その隣で同じだけ罪を背負ってマサフェリーを一人にしないのがウォーレンなんだろうな……。

・今日の公演は前回にも増して迫力があった…。今日来ることができてよかった。

・窪寺さんへの追悼メッセージが公演開始前にスクリーンに映し出された。

・最後のトークショーはとてもかわいかった。高本さんすごく末っ子だな…。仲田さんは大人っぽい感じ。どんどん話が脱線する感じが面白かった。仲の良さが伝わってきた。

・最後の殺陣、ちょっと変わった…?マサフェリーが剣なしで闘うのは演出でした…誤解して申し訳ない。今日は前回よりブラッシュアップされていた気がした。

 

【11/22 18:00ライビュ】

・ライビュだと顔がアップになるからマサフェリーの鬼気迫った顔がよく見えてとても良かった…。特にラインハルトを殺すところ。綺麗な顔が鬼のような顔で絶叫していて、おそろしく、しかし哀しく、とても胸を打たれた。

・挨拶直前の退場で仲田さんが高本さんの肩叩くの毎回やっているけど本当にかわいい……大阪の時は高本さんがやめろよ〜って感じで軽くのけてたけど今日は仲田さんが高本さんがやってたファンサ真似してから叩いてて高本さんがちょっと照れた感じに笑いながらのけててかわいかった…。レンマサちゃん実際にやってたらこんな感じかな…。

・最後の挨拶がわちゃわちゃで笑ってしまった。今日はテオドールとラインハルトだったけど、作中ではテオドールがラインハルトを殺す関係なので、それを踏まえてかテオドール役の方がラインハルト役の方を立てていてギャグな感じで師弟をやっていて面白かった。その後もラインハルト役の人が「明日で終わるの悲しい」みたいなことを言って泣き真似し始めたらテオドール役の人もジョナサン役の人も仲田さんも泣き真似を始めてかわいかった。締めの挨拶の仲田さんはにこにこしてて笑うのが好きそうだけど言葉をちゃんと選べる人だし包容力もあるし大人っぽい落ち着きがありながら空気も読めててすごい…この人…人格が好き…とうらぶの大演練のときとかもっと注目しておけばよかった…!!!!!

・毎回思うけどOPがすごく好き。ハーモニーがめっちゃ綺麗だし耳に残る。早くサントラ欲しい。

・私が観に行けるブラシャはこれで最後なのだけど本当にこの瞬間を止めたいな…

刀剣乱舞/灯 改変 いくさ世の徒花の記憶(ネタバレあり)

綺伝改変を見てきた…。

 

久しぶりの舞台。

脚本に感動したのはもちろんのこと、絶対に綺伝本編をやるぞという気持ちを端々から感じて泣いた。

舞台が好きだ。

この灯を絶やしてほしくない。

 

 

(8/9追記:大千秋楽配信見ました。改めて気づいたことやその感想も入れます。)

【8/9の感想】

最後の挨拶で泣きすぎてべしょべしょになった。この大千秋楽はただの大千秋楽ではなかった。これは刀ステの、それどころか演劇全体の命の灯がかかった大千秋楽だった。無事に見届けられたことが幸せであり、かけがえのないものだった。

山姥切長義役の梅津瑞樹さんの力強い言葉が印象に残った。

 

「これが刀ステです、演劇の力です!」

 

こんな状況でも勢いそのままに形を変えて届けるその想いが本当に響いた。戦い続ける座組としての刀ステの挑戦、そしてその挑戦を叶え魅せる舞台という表現方法の柔軟さ、それゆえの原始的な力強さを本当に感じられた作品だった。

 

舞台という表現が去年まで行っていたものは、突如形を変えてしまった社会には合わず、舞台に関わる人々は息苦しく窒息するような思いをしているのだろう。相次ぐ公演中止、上演形式の変更、そういったところから生じる金銭的な影響も、練習ができないといった技術的な影響も甚大だと思う。そんな苦しみの中の足掻きを、いち観客にすぎない私が消費してしまってもいいのかという考えもある。しかしこの作品は、「上演形式変更で哀れにも本調子の出なかった舞台」ではなかった。むしろこの状況を逆手にとって表現に織り込んでしまう、圧倒的な、本当に圧倒的な強さがあった。正直、こんな逆境じゃないと見られなかった。舞台は強かった。きっと私のこの感動は、哀れに弱ったものの涙の苦労に抱く感動ではなく、むしろ苦しみの中の足掻きすらもエンターテインメントの糧にしてしまったその柔軟さと見事な手腕、そしてその奥に、彼らの"灯"への渇望と決意を見たことへの安心感なのかもしれない。

舞台は素晴らしい。そして、強かった。

必ずまた観に行きます。

 

 

 

【7/28感想】

・心に残ったシーンは数あれど、やはり元の主と同じことを歌仙にさせる最後のシーンに抉られた。歌仙は元の主が自分を使って36人を手打ちにしたことを雅じゃないと言っているし、少なくとも愉快な逸話だとは思っていない。どちらかというと負の感情を持っていると、私は認識している。その歌仙に、元の主が出来なかった妻殺しをさせ、その妻の血がついた刀を歌仙が自らの着物で拭う。鬼とは脚本家ではないのか…。歌仙はこれで元の主と同じ罪を背負ったのだ。果たして人ではない歌仙は赦されることはあるのだろうか。

・山姥切長義は、刀剣男士は人ではないということ、歴史を守るのは刀剣男士の本能だということに繰り返し言及していた。この2点は今までの作品でも言及されていたが、ここで改めて繰り返すことで地蔵行平の行動の特異さ、ガラシャが「弟のようだ」と言って親しみを覚えた彼の人臭さが強調されていたのかもしれない。そしてこの人ではないというところがキリシタン大名たちには残酷だった。彼らの信仰、友愛、そういったものを切り捨てても歴史を守る刀剣男士。その、絶対的な人との区別。この物語は、主という人間に仕えるモノたちの物語だけど、それは無数の人の思いや願いの敗北の物語なのか。

ガラシャ、絶対当て書きでぴったりで最高だった…。夫の気持ちを確かめたいと言っていた美しい妻が、本当は赦されたかっただけだと言って人ではない何かに成り、着物を脱いでタキシードを着、薙刀を持って戦う。宝塚の男役を演じていた役者さんという背景を活かした変身だと思った。その後も声色を使い分けて、神としての男役っぽい声と、時折覗かせる人臭い元のガラシャの声、その二面性が非常によかった。人から人ではない何かに変身したことを、元宝塚男役という一種の二面性のある背景に合わせたことで、普段の日常の理論とは違う存在になったという意味の違和感が、神聖さを伴って美しく、そして恐ろしく伝わってきた。役者は舞台上で役を演じることで神性を帯びるが、あのガラシャは神性を帯びたことで"役が降ってきた"のかもしれない。

・全体的に、舞台的なデフォルメを使うことで接近を出来るだけ減らすという演出だった。「2人とも客席を見ているが2人は会話している」とか、「壇上で切る動作をしたら下段のキャラが切られ動作をする」とかそういうやつ。その結果客席に伝わる情報が限定されるのだが、講談師を置くことで情報量や勢いを補いつつ、そのデフォルメが客席に想像力を依頼していること自体をわかりやすくしていた。演出として面白かったなぁ。「他の本丸の記録をなぞっている」という設定と上手く噛み合っていた。刀剣乱舞はこのメタな状況の利用が巧すぎるな…。役者同士の距離を取らなければならない現実の社会の状況を、舞台的なデフォルメを効かせて講談師を置いて物語内物語に仕立てて勢いはそのままに違和感を減らし、さらに本来やるはずだった形の舞台もいつか上演するという決意も暗に伝える。刀剣乱舞の運営そのものが痛快だ…。

・物語全体が、「他の本丸の出陣記録を、刀ステ本丸の歌仙たちが読む」という形式で綴られていた。(最後の本丸でのシーンで籠手切江は引き止められていたけど獅子王は引き止められなかったのを見ると、刀ステ本丸だと獅子王は出陣してないのかな…?)  (8/9追記:いや飯屋のシーンで出陣したっぽいことを言っていたので出陣してそうですね…)刀ステ本丸の歌仙や長義は、黒田の様子が違うと言っていたし、黒田はどうやら三日月宗近に近いような状況にあるようだったし、この人は綺伝本編でキーになるのかもしれない。綺伝本編、見たいな……絶対見たい。絶対にやってほしい。絶対に見るので。

 

ガラシャが地蔵行平に己を殺させて一緒にインヘルノ行こうって言ったシーンがあったけど、では歌仙は…?(しんどい…)

・亀甲貞宗の認識が変わった。亀甲貞宗はまだ持ってないので、変態キャラ(ごめん)ということだけ聞いていたのだけど、長義と一緒に城に乗り込むシーンは頭のキレを感じて好きだった。刀剣乱舞はみんな頭がよくて好きですね…。必要なときに必要な演技が出来るタイプの頭のキレは本当に好きです。

・にっかりと亀甲貞宗があやしい会話をして、長義と歌仙はお笑いよりは皮肉屋で、地蔵行平と古今伝授は忙しそうで…という部隊だったので籠手切と獅子王の元気が癒された。

 

今日見て良かったら千秋楽も見ようと思っていたけど、これは間違いなく見ます。

舞台は楽しいなぁ。

絶えぬ灯に期待します。

 

(【8/9追記】獅子王の、「斬った相手を哀れむ俺たちの感情もヌエみたいだな(うろ覚え)」と言っていたのが印象的だった。刀剣男士は刀の本能で歴史を守る、そのために必要とあらば前の主すらも殺す。特に今作では長義のセリフで改めて刀の本能が強調されていたが、その刀剣男士にも人のような感情があり、だからこそ地蔵行平みたいな行動を取る者がいるし、歌仙は前の主について色々考えるし、獅子王は死にゆくものの祈りを受け取れる。人とは決定的に異なる存在でありながら、その由来は人の歴史、人の思いなのか…。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【BL視点の感想…】

 

 

・…………あの、あの、かめちょぎじゃないですか!?!?!!??!???!?!!?…ちょぎかめ???????まぁどっちでもいいです(リバも食うオタク)、既に記憶を喪失してしまっているのだけど、亀甲貞宗がなんかあやしい発言をして長義がやめろよみたいなことをうっすら照れ?みたいなちょっと弱めの声色で言ってませんでしたか(8/9追記:「いいね、君のそういうところゾクゾクするよ」「やめてくれ…」でした)!?!!!?!!???!あの二言と、ガラシャを拐ったと嘘をつくシーンでのお察し会話得意そうなところが私を盛り上げました…………………ハイ以上です

 

AW黒 Live2D 全文 ネタバレ

中止になってしまったので掲載します。

会場内で文字起こしをしたものです。よく確認はしましたが、素人ですので表記のぶれや内容の抜け漏れはご容赦ください。

行けなかった方が少しでも雰囲気を味わって頂けると幸いです。

 

 

【入り口】

音也:そのクリスタルに触れてごらん。誘われるままに手を伸ばすと、そこにはこの世界によく似た世界が映し出された。

トキヤ:それはこの現実とは異なるもう一つの現実。朝には太陽が昇り、夜には月が浮かぶ。人は生まれ、誰もが等しく死を迎える。でも何かが違う世界。

蘭丸:黒。それは全てを染め上げる強さと確固たる意思を持つ色。しかし、それゆえに厭われ孤立する。

レン:欺瞞、混沌、恐怖が支配する影の世界。絶望の中にありつつも、心の何処かで光を求めさまよう。

嶺二:IF…これはあり得たかもしれないもう一つの彼らの物語。どんな夢を持ち、どう生きるか。声が聞こえる。

レン:真実の愛などないと強がり生きながら、誰よりも愛を渇望している。富や権力をもってしても決して叶わぬ望みに身を焦がして。

音也:がむしゃらに夢を追いかけた。足元も見えない暗闇の中を。現実から目を背け、悲しみを忘れようと自分を欺きながら。

トキヤ:重い枷を自らに嵌め、常に完璧を求めてもがき苦しむ。閉じられた世界の扉を叩く音を信じ、茨の道を進む。

嶺二:苦い記憶にとらわれて、取り返すことのできない時間を巻き戻す。壊れた心を隠すように理想の姿を演じ続ける。

蘭丸:醜い争いに傷ついても、諦めることのできない輝きにすがりつく。残酷な運命に抗い、答えのない答えを探す。

 


【バックステージ黒組】

嶺二:IFの世界ではみんな全く違う道を歩んでいたけど、選択が一つでも違えばあり得た現実だったよね。みんなはどう思った?

音也:アイドルでよかったって心の底から思う!音楽は本当に特別なんだ!歌ったりギター弾いてると生きてるって感じる!

蘭丸:音也はどの世界でもあんまり変わらなそうだな。魂をかけられることがあるってのは幸せなことだ。たとえ報われなくてもな。

レン:ランちゃんもそのロックさは変わらないね。オレはアイドルという夢を見つけていなかったら性格さえも変わってたかもね。

トキヤ:夢を見つけたから変わったんでしょう?何をするかではなく、自分がどう受け止めどう生きるかが大切なんだと思います。

嶺二:そして誰と一緒にいるかもね。人は1人では生きられない。お互い影響しあってる。改めてみんなと出会えてよかったよ。

蘭丸:てめーひとりでカッコつけてんじゃねーぞ嶺二。こいつらみんな当たり前だってツラしてるぜ。じゃなきゃ一緒にいねーだろ。

トキヤ:考え方や生きてきた過程が違っても音楽が私たちを一つにしてくれる。声を重ねて歌う喜びを教えてくれました。

レン:そしてそれは聞いてくれる人がいるからこそ成立する。オレたちが紡ぎ出した夢を愛し求めてくれる。なんて幸せなんだろう。

音也:あー!もう今からライブが楽しみ!みんなの心に響く歌にしよう。このメンバーならそれができるって信じてるから!さあ行こう!

 

 

 

【バックステージ白組】

真斗:バックステージから仲間のパフォーマンスを見守るのはよいな。気持ちが鼓舞され、自然と気合いが入るというものだ。

那月:しっかり準備をしてステージに備えましょう。ちゃーんとお水も飲んでくださいね。そうだ、僕が飲ませてあげます。はい、アーンして。

:那月の気持ちは嬉しいけど自分で飲めるから大丈夫だ!そういうお前もえり曲がってるぞ。少ししゃがめ。

セシル:うふふ。仲間と一緒だととても心強いです。ひとりで歌うのとは違う楽しさがある。素晴らしい時間を過ごせるように頑張りましょう。

:もちろんだよ。そのためにたくさんレッスンをしたからね。みんなを魅了するパフォーマンスにしよう。

カミュ:その前にライバルたちのお手並み拝見といくか。同じステージに立つに値するか見せてもらおう。

AW黒 感想 2/28

黒の方の感想。

 

・レンちゃーーーーーん………………入り口のLive2Dで泣いたよ……真実の愛を知らないレンちゃんだ。授業をさぼりライブハウスに入り浸って漫然と過ごしながらも、モデルという形で求められることで小さく承認欲求の充足を感じているところが、この世界の彼の夢への渇望を感じさせる。

あとはレンちゃんの雑誌読みました?02は「目の覚めるようなブルー」。ここで聖川真斗が青いお茶をなんと表現したか思い出して頂きたい…。

 

・音也くんはね…展示のギターがやばかった。

MORRIS Y-021MH NAT アコースティックギターhttps://www.amazon.co.jp/dp/B081T2SGHV/ref=cm_sw_r_cp_api_i_Lc6vEbN1CQ7Q2

f:id:sheltie999:20200227214828j:image

このギターは初心者向けの安いモデルで、まぁこれだけなら展示組んでる東京ドームか読売広告社ブロッコリーに予算なかったのかなとも思えるけど、大事なのはホールの中に「高橋健」って明らかに知らない人の名前が書いてあるところ。つまりこの世界の音也くんはこれを新品ではなく中古で買った、あるいは譲ってもらったと推測できる。するとこのギターは「音楽はあくまで趣味」の世界の音也くんの象徴なのだなと思う。アニメの何期だったか忘れたが、アイドルになって新しいギターを買って嬉しそうにしていた音也くんを思い出すと、現実の音也くんはもっと良いギターを持っているはずなのだ。

 

・「人前で歌うことに抵抗がある」トキヤ、めちゃくちゃやばい…トキヤが昔音痴だったという部分が現実トキヤと同じだと仮定して、さらに入り口Live2Dの「重い枷を自らに嵌め、常に完璧を求めてもがき苦しむ。」という発言を加味すると、この世界のトキヤは完璧主義すぎてとっくに克服したはずのコンプレックスにも自信が持てない人間なのでは…?今のトキヤはこの潔癖すぎるほどの完璧主義とうまく付き合って体型管理をしているけど、この世界のトキヤは自身の能力に対する評価と客観的実力のギャップが激しいタイプなのかなと思った。このトキヤは、歌で自分を表現するということを知らない…

 

・今回の企画の設定見た時から蘭ちゃんは一番ブレない人だなと再認識した。アナザーワールドに飛ばされてさえ音楽を、ロックをやってる。仲間に恵まれないという悩みを拗らせながら。でも実際はこういうバンドマンが多いのだろうなと思う。現実の黒崎蘭丸でさえ、バンドを組むことを諦めてアイドルの世界でロックをやるという手段を選んだ。

この世界の蘭丸は多分、シャイニング早乙女にスカウトされてない。あるいは、早乙女にアイドルでもロックをやると言った時に却下されてしまった世界だと思う。なぜなら蘭丸の優先順位はバンドを組むことではなくロックだから。本質的に、彼の諦められない輝きがロックであり、それを忘れてうっかり大学に行って"普通の"生活をするなんてことは絶対に無いのだ……。それが恐ろしくもある。

 

・嶺二よ…ここでも友を喪うか…。嶺二は同期の天才の影響で役者の夢を諦めたとあるけど、この同期が誰をモチーフにしているのかは明白。そうだね、愛音だね…。その結果が実家を継ぐという結末なのが恐ろしい。嶺二は原作ゲームでもアイドルを辞めようと思った時実家に逃げている…。原作ゲームでは実家の自分の部屋に引きこもったまでだったが、今回は引き留める者(=七海春歌)(="君")がおらず実家を完全に継いでいるのだ。

 

 

黒の方がAW展示累計3度目かつ様々な考察を読んだ後というのもあって詳しく書けた。

AW全体への認識は変わらず、「"きみ(≒七海春歌うたプリファン)"の不在によりアイドルという夢が喪失した世界」と考えている。そしてその世界においては彼らの根源的なコンプレックスが解消されていない様子を描くことで、逆説的に我々うたプリファンがこれまで応援してきたことが彼らのアイドルとしての輝きに繋がっていると訴えているのだと解釈している。

AWに関しては4月のCD発売を待つのみなのだろうか…?

うたプリ全体の展開を考慮すると、6月下旬の10周年発表まではまた新たな展開が続くと思われる。それまでになんらかの動きを期待したい気持ちはある…。

パイフロリリイベ

劇シャイPirates of the frontierの円盤発売記念イベントに参加しました。この日2回目の公演だったようです。

 

ずっと笑わせてもらいました…3人はボケとツッコミのバランスがよく、菊池さんがボケるとすかさず小波津さんが突っ込み小澤さんが乗っかるといった具合で終始笑いが絶えませんでした。

菊池さんの千本ノックはもはや才能だと思います。鬼才。単語から突拍子もない連想をするのが本当に上手い。本当に千本やってほしいですね笑

また、名場面振り返りは抜粋で見ても感動するなと改めて感じました。演じたご本人のツッコミ付きで舞台を鑑賞できるのはなんと贅沢なことか…。

最後のお見送りもちゃんと目が合って嬉しかったなぁ。とても素敵な時間でした。本当にありがとうございました。

AW白感想2回目

AW白2回目に行ってきた。

 

ツイッターで感想を書いている方がいらっしゃったが、これは「あなた(うたプリファン、乙女ゲームとしてのうたプリの主人公、七海春歌の重なったもの)」に出会えなかった世界の話なのだという説明がすごくしっくりくる。

うたプリは「君が僕を創ってくれた」というマジLOVEキングダムの歌詞からも分かるように、ファンである私たちが今まで支えてくれたからこそ生まれ、ここまで続けることができた」というスタンスをとっている。それを考えると、このif世界は、彼らがアイドルをしていない世界=私たちが彼らに出会わず彼らを欲しなかった世界の話なのではないかと思う。

・live 2Dのセリフから、彼らがここにいたい=アイドルになりたいと望み、私たちもまた彼らに会いたいと望んだ、そんな様々な出会い=奇跡が積み重なって彼らはアイドルをやっている。…今までもこの感動を歌った歌はあったが、今回の企画はまさにこの感動に強くフォーカスしたものなのではないかと思う。ソロベストアルバムやマジLOVEキングダムでアイドルとしての彼らが盛り上がっている中、今あえて「彼らがアイドルでない世界」をifという形で表現する事で、今のアイドルとしての世界が無数の奇跡の上にあることを逆説的に示し、前述の感動を強調したのではないか。

・その世界で彼らは各々の悩みや不安を抱えながら生きている。白い光は希望の象徴。彼らはそこに手を伸ばす。(が、その光の裏には闇がある)

・live2Dなっちゃんの言葉やエピソードカードを読む感じだと、音楽に対する気持ちは皆こちらの世界と変わらない。